東京高等裁判所 昭和43年(ネ)859号 判決
次に控訴人は、被控訴人は前記黒森の土地の払下げを受けてこれを第三者に転売し、その利益を分配するという約定のもとに控訴人から金五〇万円の交付を受けた旨主張するので案ずるに、証拠を総合すると、次の諸事実を認めることができる。
(一) 被控訴人は、かねてより前記黒森の土地を買い受け、これを直ちに他に転売して売買差益を得、もしくは繩延び(実測地積と登記簿上の地積との差)分の土地を利得することを計画していたところ、昭和四〇年一月中旬頃訴外藤田善徳と被控訴人との間に「(イ)同訴外人は被控訴人に対し右計画の実行に要する費用として、とりあえず金五〇万円を出資する。(ロ)被控訴人は右の出資を受けたときは同訴外人に対し、自己の名と責任において右の事業をその成功または不成功が確定するまで遂行する。(ハ)右事業が成功して利得を得たときは、被控訴人は同訴外人に対し利益金の一部またはこれに相当する土地を分配する。」との趣旨の契約(以下「本件契約」と称する)が成立した。
(二) 当時右訴外藤田は訴外梶原正稔と共同して電話加入権の売買業を経営していたので、両訴外人は相談の上各金二五万円を出捐し、訴外藤田は右合計金五〇万円を控訴人主張のとおり三回に分けて被控訴人に交付したところ、被控訴人はこれを受領した上、その秘書と称する訴外山本源治をして同訴外人名義の領収証を作成させて、これを訴外藤田に交付した。
(三) 被控訴人は右金員の受領後二回にわたり右金員を使用して現地視察および不動産業者等の接待を行なつたが、その後は訴外藤田の口頭による数次の催告にもかかわらず、口実を設けて前記計画の実行行為を全く行なわず、事業を完結するに至らなかつた。
控訴人は被控訴人が本件契約中前記(ロ)の債務を履行しないので本件契約は訴外藤田により右債務不履行を理由として解除された旨主張するのであるが、右に説示した本件契約は出資、事業および利益分配の三要素から成る点において有名契約中民法所定の組合契約に最も類似する(事業は反覆性を有しないし営業者が商人でない点で、商法の匿名組合に関する規定の適用は排除される)から、出資金の返還については同法の組合に関する諸規定を類推適用すべきものと解するのを相当とするところ、組合契約については解除の遡及効は認められない(同法第六八四条)のみならず、組合員は他の組合員の債務不履行を理由として組合契約を解除することはできず、この場合には脱退または解散により持分の払い戻しまたは残余財産の分配を請求しうると解するのを相当とする。したがつて本件契約においても訴外藤田は被控訴人に対し前記事業の成功不能を理由として出資金の清算を求め、清算の結果剰余金があればその返還を請求しうるにすぎず、出資契約を解除し原状回復義務の履行として出資金全額の返還を求めることはできないものといわなければならない。
(荒木 大和 田尾)